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FIRE後は投資信託をどう取り崩す?高配当との併用で資産寿命を延ばす現実的な戦略

FIREを達成しても、それは“ゴール”ではありません。むしろそこからが「本番」です。

築いた資産をどう取り崩し、どのように使い、いかに長く持たせていくか──。この「下山戦略」こそが、FIRE成功のカギを握ります。

本記事では、実際にFIREを達成し、投資信託と高配当ファンドを併用しながら生活している筆者が、自身の資産構成やシミュレーションをもとに、現実的な取り崩し戦略を徹底解説します。

登りと下りはまったく違う。FIRE後の運用は「山下り」に例えるべき理由

FIRE達成までの道のりは、積立・節約・投資の「山登り」でした。収入を得ながらインデックス投資で資産を増やし、「将来の安心」という頂上を目指していたわけです。

しかし、FIRE後はその逆。「山を下る」ように、積み上げた資産をどう減らしながら使うかを考えるフェーズに入ります。

この“下山”には3つの違いがあります:

登りの戦略と下りの戦略はまったく異なります。だからこそ、「FIREを実現した後」の戦略を持つことが重要なのです。

FIRE後の資産取り崩しが難しい3つの理由

1. 市場タイミングが命取りに|取り崩しは相場に左右される

積立期は暴落が“買い時”でしたが、取り崩し期では逆。暴落時に資産を取り崩すと、「安く売って資産寿命を削る」ことになってしまいます。

たとえば2022年や2024年のような下落相場で毎月売却を行うと、以下のような悪循環に陥ります:

このため筆者は、「暴落時には取り崩しを避ける現金バッファ」と「分配金による生活費補填」で下落耐性を構築しています。

2. 減る資産を見る心理的ストレス|FIRE後のメンタルとの向き合い方

積立時には「資産が増えていく」喜びがありましたが、FIRE後は「減っていく資産残高」と日々向き合うことになります。

これが予想以上にメンタルに響きます。特に筆者のように40代でFIREを達成すると、「あと50年持たせなければいけない」というプレッシャーが常につきまとうのです。

その対策として、次のような設計を行っています:

3. 長寿リスクと資産寿命の設計

FIRE後に30年、40年、場合によっては50年以上の人生が残されています。ここで重要なのは、資産を「均等に取り崩す」のではなく、フェーズ別に調整していくことです。

例えば、以下のような使い分けが効果的です:

このように、ライフステージごとに資産の役割と取り崩し方を明確に定義することで、長寿リスクにも耐えうる設計が可能になります。

なぜインデックス投資の取り崩し戦略を選んだのか?

FIRE後の資産戦略としては、「高配当株を保有して配当金で暮らす」スタイルが王道とされています。しかし、筆者はあえてインデックス投資信託の取り崩し戦略を主軸に据えています。

その理由は大きく3つあります。

1. 長期リターンの観点ではインデックスが圧倒的に有利

過去のデータを見ると、S&P500やNASDAQ100などのインデックスは、年平均7〜10%の成長を示しています。

これに対し、高配当株は利回りが3〜5%あるものの、キャピタルゲインの成長は限定的。特に企業が成熟しているため、株価の上昇幅はインデックスに劣ります。

つまり、資産総額を最大化したいなら、インデックスの方が理にかなっているということです。

2. 税効率が優れており、健康保険料への影響も少ない

日本では、米国株の配当金には以下の税金がかかります:

つまり、配当収入の約3割が税金で失われることになります。

さらに、配当収入は「所得」として健康保険料の算定対象にもなるため、FIRE後は保険料が跳ね上がるリスクがあります。

一方、インデックス投信の売却益(キャピタルゲイン)は必要なときにだけ発生させることができるので、税金と保険料の両方をコントロールしやすくなります。

3. 取り崩し額とタイミングを自由に設計できる

配当は企業が決めるものであり、私たち投資家がコントロールすることはできません。

しかし、インデックス投信の売却は、「いつ・どのくらい売るか」を自由に決めることができるのです。

たとえば、以下のような運用が可能になります:

このように、生活スタイルや家族イベントに応じて取り崩し額を調整できる点が、筆者にとって非常に大きなメリットでした。

筆者の資産構成(2025年3月5日時点)

2024年にFIREを実現した時点では現金比率が高めでしたが、2025年3月現在では以下のような構成になっています。

筆者はこのバランスを「資産成長(55%)+安定収入(30%)+緩衝材(15%)」と定義しています。

シミュレーションの前提条件

今後の取り崩し戦略を立てるにあたり、以下のような前提条件を設定しています。

とくに重要なのが、取り崩し時期を資産種別ごとに明確にすることです。これにより、税制改正や市況変動にも対応できる柔軟性を保ちつつ、心理的にも安定したFIRE生活が実現可能になります。

投資信託の取り崩し戦略:段階別の具体プラン

筆者はFIRE後の取り崩し戦略を、「資産タイプ」と「時期」で大きく3段階に分けています。

特定口座:柔軟性の高い主戦力(2025年〜)

特定口座は、いつでも売却・取り崩しができる柔軟な資産です。FIRE生活の立ち上げ時期である40〜50代前半に活躍します。

ポイントは「インデックスで成長、分配金で生活」という2段構え。暴落時にはインデックスの取り崩しを止め、現金や分配金で乗り切れるように設計しています。

NISA口座:10年後からの主力候補(2035年〜)

NISAは非課税という圧倒的メリットを活かすため、できる限り長期間寝かせておきます。筆者の想定では、2035年以降の50代〜60代に活用します。

NISAは旅行・趣味・子どもの教育など、“心のゆとり”に関わる支出に充てる予定です。

iDeCo:老後の防衛線(2045年〜)

企業型DCから移行したiDeCo資産は、60代〜90代の老後資金として位置づけています。

ただし2025年度税制改正で、「一時金の退職所得控除が10年縛りになる」方向性が示されており、60歳時点で一括受給せず、年金形式で分割受給することを想定しています。

このように、税制・市況・支出を見据えて、時期と資産タイプを分けて設計することが、FIRE後の資産寿命延長に直結します。

取り崩し全体イメージ:ライフステージ別のプラン

筆者が想定している40代〜90代のライフステージ別取り崩しモデルは以下の通りです。

資産カテゴリ40代50代60代70代80代90代
特定口座(インデックス)月5~10万円月5~10万円
特定口座(高配当投信)月25~40万円月25~40万円月25~40万円月25~40万円月25~40万円月25~40万円
NISA口座運用のみ月20~30万円月20~30万円
iDeCo運用のみ運用のみ月20万円月20万円月20万円月20万円
年金月10万円月10万円月10万円月10万円

このように、ライフステージごとに「資産の役割」を切り替えることで、無理なく・長く・安心して使い続けられる設計が可能になります。

高配当ファンドと現金の役割:安定性と柔軟性の両立

高配当投信のキャッシュフロー安定性

筆者のポートフォリオで重要な役割を担っているのが、高配当型の投資信託(インベスコ、REX3兄弟など)です。これらは毎月の分配金で25~40万円の安定したキャッシュフローを生み出し、生活費の基盤になっています。

特に「普通分配金」が中心の月は非常に安心感があります。生活費の多くを“実収入”として賄えるからです。一方で「特別分配金」が中心の月は元本取り崩しとなるため、現金補填や支出の調整が必要です。

このため、筆者は毎月の分配金明細を記録し、普通分配金率の推移をウォッチしながら、取り崩しのバランスをとるようにしています。

現金の役割は“精神のセーフティネット”

1,440万円(生活費3年分)の現金を持つ理由はただひとつ。暴落時に取り崩しを止めるためのバッファです。

FIRE生活では「数字より心」が大切になる瞬間が多くあります。現金保有はその心の安全弁なのです。

4%ルールとトリニティスタディをどう使うか?

よく言われる「4%ルール」は、資産を30年間持たせるための“定率取り崩し”の目安です。ですが、現実のFIRE生活では、以下のような理由でそのまま当てはまりません。

そこで筆者が取っている戦略は、トリニティスタディの考え方をベースにしつつ、実態に合わせて柔軟に取り崩す方式です。

「4%を超えて使う月があってもいい。使わない月もある。トータルで資産が増えていればOK」
というスタンスで、資産の価値を“使うこと”に重点を置いています。

FIRE後において最ももったいないのは、「不安でお金を使えないまま人生が終わること」だと痛感しています。

終わりに:FIRE後の資産は、使ってこそ価値がある

FIREを達成すると、時間はたっぷりあります。でも、意外と「お金を使うのが怖い」という気持ちと向き合うことになります。

だからこそ、筆者は資産を「ビジネスパートナー」のように扱っています。

FIRE後も、自分の人生に責任を持ち、意思を持って資産と向き合う。
これこそが「真のFIRE生活」であり、筆者が日々実感している“現実”です。

築いた資産は、守るためだけにあるのではありません。
自分の人生を最大化するために、自由に使っていいのです。

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