「FIREしたら毎日が自由でハッピー!」
そんな期待を胸にFIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指す人は多いでしょう。私自身もそのひとりでした。
しかし、会社員を辞め、1年間FIRE生活を実践してみた今、当初のシナリオとは異なる現実が数多くありました。本記事では、FIRE後に感じたリアルな生活・お金・家族との関係・働くことへの意識の変化などを正直に綴ります。
FIREとは「無職になること」ではなかった
定義より大切なのは、自分にとってのFIREの意味
FIREと聞くと、「資産を作って無職になること」とイメージされがちです。ですが、実際に会社員を卒業して無職になって気づいたのは、「FIREの定義は人それぞれ」ということ。
半年間、何にも縛られずに生活する日々を過ごしました。周囲からは「羨ましい」と言われることも多かったですが、完全な自由があるわけではありません。家族と暮らしていれば、家事・育児・生活のリズムが自然と発生します。
自己研鑽や創作活動は思った以上に難しい
「この機会に資格を取ろう」「創作活動を始めよう」と意気込んでも、強制力のない環境ではなかなか続かず、モチベーションも維持しづらいものです。
そして、自分の時間を何に使うか考えるたびに、「それは金銭的リターンがあるか?」という視点がよぎり、結果的に行動が鈍ることもありました。
FIRE後に「働くこと」は敗北ではない
資産を減らすことへの心理的ハードル
FIRE当初、「二度と雇用されて働くものか」と考えていました。しかし、資産だけで生きる生活は想像以上に不安定で、特に相場下落時には資産の取り崩しに大きな抵抗を感じました。
たとえ十分な資産があっても、急激な資産減少やインフレリスクを前にして、取り崩す決断ができないのです。
労働の比重を下げて、メンタルも安定
そこで私は、自分の時間と気持ちを最小限だけ切り売りする「バリスタFIRE」という形で働く選択をしました。昇進・昇給などを気にせず、与えられた仕事だけをこなす働き方は、会社員時代のようなストレスもなく、むしろ生活に安心感と張りを与えてくれました。
「自由な時間」は万能ではない
FIREで時間ができれば、やりたいことが見つかると思っていました。しかし実際には、やりたいことを探すこと自体がストレスに。加えて、「支出が増えるかもしれない」という不安から、何かを始めるにも躊躇してしまうのです。
特に資産が1億円程度だと、残り40年を乗り切るには不安がつきまといます。投資環境の変化、為替、インフレ、老後の医療費──。すべてを運に任せるわけにはいかないと感じています。
家族持ちFIREは、独身FIREとは全く違う
FIRE達成者の多くは独身、またはDINKS、子育て終了層です。子育て中のFIREは、教育費や予期せぬ支出が多く、極めて難易度が高いと痛感しています。
子どもの成長とともにお金はかかります。「留学したい」「医大に進みたい」など、夢を叶えるために支援できない親にはなりたくない。子どもの未来を「親のFIRE」の犠牲にするわけにはいかないのです。
4%ルールを鵜呑みにしてはいけない
「毎年資産の4%を取り崩せば大丈夫」という4%ルール。これは過去の米国市場の平均リターンをもとにした理論です。
しかし、これからの世界ではインフレ、円安、為替変動、社会保障の変化などが予想され、単純に当てはめて安心できるとは言えません。私は、4%ルールを全面的に信じることはしていません。
※コロナ禍が始まった2020年3月ごろのドル円は105円程度と2025年7月時点と比べて約30%円高となっておりました。


出典:Google Finance
インデックス投資の「逆複利」リスクと心理的葛藤
取り崩すことの難しさ
理論上、最も効率の良い資産管理は「現金を最小限にして、必要なときに投信を取り崩す」ことです。しかし、実際に無職でこの方法を取るにはメンタルの強さが求められます。
下落時に取り崩せば資産は加速度的に減少し、将来の安心が削られるような気持ちになります。上昇時に取り崩しても、「もっと上がるかもしれない」と思い手が止まる。
資産が減る恐怖との戦い
収入がないなか、支出だけが続く。半年後の市場がどうなっているかわからない。このような環境では、精神的な負担が非常に大きく、結果的に「何も楽しめない生活」になる恐れすらあるのです。
結論:子育てが終わるまでは無職FIREすべきではない
- 働きたくない → 少し働くだけでメンタルのボラティリティが劇的に減る
- 自由な時間が欲しい → 時間がありすぎると、逆に自分を追い詰める
- 4%ルールを信じたい → 家族がいれば支出は読めず、想定外が必ず起こる
- FIREでハッピーになれる → 実は別の悩みが生まれ、イージーモードとは程遠い
- 他人のFIREが羨ましい → 見えない苦労を知り、冷静になれた
これからFIREを目指す人へ
FIREは人生のゴールではありません。むしろ、スタート地点です。
「何も縛られない生活」よりも、「適度に働き、適度に自由な時間がある生活」のほうが、自分には合っている。そう確信しています。
これからFIREを目指す方には、ぜひ一度立ち止まり、自分の人生設計、家族、支出の変動可能性、メンタルの強さなど、総合的に考えてみてほしいと思います。
最後に:FIRE後の生活を豊かにするために
✔ 子育て中のFIREは難易度が高い
✔ 働かないこと=自由 ではない
✔ 無職よりも少し働いたほうが心が楽になる
✔ 取り崩し戦略は現実的かつメンタルとの戦い
✔ 自分に合った「自由と責任のバランス」を見つける