FIRE後の“毎月分配設計”はどこを軸に置くべきか?
FIRE後の資産設計において、多くの人が直面するのが「毎月の分配金をどこで安定させ、どこで補強するか」という問題です。
筆者自身も例外ではなく、円建ての安定収入であるインベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)を軸にしつつ、それだけではカバーしきれない ドル建てのキャッシュフロー をどう組み込むかを模索してきました。
転機となったのは、2025年3月。楽天証券で REX3兄弟(AIPI・CEPI・FEPI) が購入可能になり、筆者は3つを各100株ずつ購入。半年以上にわたり、分配金・株価・回復力を毎月追い続けてきました。
結論、REX3兄弟は“サテライトとしての完成度が極めて高い”ドル建て毎月分配ETFであり、
インベスコを中心としたFIREポートフォリオ全体を強力に底上げしてくれる存在でした。
この記事では、
- REX3兄弟の仕組みと特徴
- 半年間の実データに基づくAIPI・CEPI・FEPIの性質
- なぜ2865(カバコ)ではなくREX3兄弟だったのか
- インベスコとの相性と二層キャッシュフロー構造
- 筆者が実際に再構築した“FIRE後の最適ポートフォリオ”
をすべてまとめて解説します。
REX3兄弟とは?構成テーマと毎月分配の仕組み
前回の記事はこちらをご覧ください
REX3兄弟は以下の3つのETFで構成されています。
- AIPI:AI関連の大型グロース株
- CEPI:仮想通貨関連銘柄
- FEPI:FANG+半導体
いずれも カバードコール戦略 を採用し、原資産に対してコールオプションを売ることで
毎月分配金の原資となるプレミアム収入 を得る仕組みです。
利回りは 年25〜40% と非常に高く、ドル建ての毎月分配としては貴重な選択肢です。
実際の運用データ(2025年2月~10月)
| 月 | AIPI月末株価 | AIPI 配当(100株) | FEPI月末株価 | FEPI 配当(100株) | CEPI月末株価 | CEPI 配当(100株) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025.02 | $44.20 | $135.50 | $44.85 | $98.05 | $42.21 | $157.77 |
| 2025.03 | $40.23 | $128.04 | $45.12 | $94.36 | $36.88 | $145.91 |
| 2025.04 | $40.05 | $110.22 | $45.30 | $82.38 | $36.72 | $132.86 |
| 2025.05 | $41.14 | $123.25 | $45.40 | $92.61 | $37.43 | $138.81 |
| 2025.06 | $43.33 | $127.39 | $45.52 | $96.22 | $40.29 | $137.97 |
| 2025.07 | $42.88 | $127.10 | $45.63 | $97.06 | $39.88 | $145.63 |
| 2025.08 | $41.42 | $123.07 | $45.37 | $97.52 | $39.11 | $141.40 |
| 2025.09 | $42.05 | $124.81 | $46.85 | $99.70 | $40.73 | $143.85 |
| 2025.10 | $43.75 | $130.32 | $48.41 | $104.05 | $40.99 | $149.62 |
本記事で使用している分配金データは、2025年2〜10月までの月次推移をまとめたものです。筆者が実際に運用を始めたのは3月からですが、比較をわかりやすくするために2月分も含めて100株換算で掲載しています。
この数値をもとに、次章からREX3兄弟の特徴を詳しく解説します。
AIPI:市場トレンドに敏感な“成長株寄りのサテライト”

AIPIはAI関連の大型グロース株を対象とするため、株価も分配金も AIテーマの強弱に連動しやすい 性質があります。
AIPIの特徴まとめ
- 株価と分配金が連動しやすい
- 下落局面は落ちるが、その後の回復が比較的早い
- プレミアム収入が安定しやすい
- AI相場が強い時期にはキャピタル・インカム両面で伸ばしやすい
スピード感のあるテーマに乗りやすいため、「攻めのサテライト」 として機能します。ただしFIRE後の安定性を優先する場合は、比率は控えめが現実的です。
CEPI:株価・分配金ともに揺れ幅が最も大きい“超ハイボラETF”

CEPIは仮想通貨関連銘柄を対象とするため、株価・分配金ともに REX3兄弟の中で最も変動が大きい のが特徴です。
CEPIの特徴まとめ
- 分配金のぶれ幅が最も大きい
- 株価の上下が激しく、良い時と悪い時の差が大きい
- トレンドが合うと強烈だが、逆風下ではスピード感を持って落ちる
FIRE後の安定収入としてメインに据えるより、「波を取りに行く枠」 として少額だけ持つのが筋の良い使い方です。
FEPI:回復力 × 安定性 × 分配効率が最も高い“主軸サテライト”

筆者が半年データで最も安定性を感じたのがこのFEPIです。
FEPIの特徴まとめ
- 株価が落ちても回復が非常に速い
- 分配金のばらつきが小さい
- FANG+半導体という強いテーマ
- カバードコールでも成長性が残りやすい構造
事実、REX3兄弟の中では「もっともFIRE向け」 と言えるのがFEPIでした。
なぜ2865カバコではなくREX3兄弟を選んだのか?

2865(カバコ)はNASDAQ100を対象とした優秀な毎月分配ETFで、8〜12%という安定した利回りが魅力です。国内ETFとして扱いやすく、価格も比較的安定しやすいメリットがあります。
しかし筆者のポートフォリオでは、“安定性”はすでにインベスコが強力に担っているため、2865のポジションと役割が重複していました。
一方REX3兄弟は:
- テーマ性が強い(AI/仮想通貨/FANG)
- ドル建ての毎月分配
- 株価の戻りが速い
- インベスコとは完全に異なる性質
という特徴があり、インベスコの弱点(上昇相場の取りにくさ、円建て偏重)を補完してくれる構造です。そのため2865は売却し、“安定=インベスコ、収益=REX3兄弟”という形に整理しました。これは2865を否定したわけではなく、役割の重複回避による設計最適化です。
インベスコ×REX3兄弟はなぜ相性が良いのか?
インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)は、5年以上にわたって毎月150円を維持し続ける安定型ファンドです。予想分配型とは異なり、基準価額が下落しても分配金が減らない“構造的安定性”が魅力です。
そのためFIRE後は:
- インベスコ → 円建ての安定収入(生活費)
- REX3兄弟 → ドル建ての高利回り(資産成長)
と自然に役割分担ができます。
テーマも通貨も値動きも異なるため、“コア×サテライト構造”が最も美しく成立する組み合わせです。
筆者の今後の戦略(2026年〜)
半年のデータと実際の受取配当を踏まえ、ポートフォリオは以下の方針へ調整しています。
CEPI・AIPIの比率は徐々に抑える
テーマ性の強さは魅力ですが、ボラティリティや分配金のぶれが大きいため、FIRE後は比率を低めにして、“波を取りたいときだけ少し持つ”という距離感が最適。
FEPIをサテライトの主軸として強化
半年の運用データで最も安定していたのがFEPI。
- 分配の安定性
- 株価の回復力
- テーマの強さ
を踏まえ、REX3兄弟の中心はFEPIとする方針。
新設定の「FANG+毎月分配型」にも注目
新設定の「FANG+毎月分配型」にも注目しています。この商品はドル建てでもカバードコールでもなく、国内の毎月決算型・予想分配金提示型という、これまでのドル建てETFとは異なる構造を持った投信です。
FEPI と同じ FANG+大型グロース領域を対象とするため、将来的には
「円建て安定分配(インベスコ) × ドル建て毎月分配(REX3兄弟) × 国内毎月分配(FANG+)」という “三層構造のサテライト強化” を実現できる追加候補として検討しています。
まとめ:FIRE後は「インベスコ×FEPI」がもっとも合理的な組み合わせ
半年以上、AIPI・CEPI・FEPIの分配金・株価・回復力 を毎月追ってきた結果、FIRE後でも資産を取り崩さないための最適な組み合わせは以下でした:
- インベスコ(円建ての圧倒的安定収入)
- FEPI(ドル建ての高利回りと高回復力)
この二層構造により:
- 円の毎月キャッシュフロー
- ドルの高利回り
- テーマの分散(AI・大型株・半導体)
- リスク特性の三層化(安定・成長・ハイボラ)
が成立し、FIRE後でも資産を取り崩さずに生活できる現実的なポートフォリオが構築できます。






