「ディフェンシブ銘柄」でも暴落する?ユナイテッドヘルス急落に学ぶ分散投資の真価とは

投資戦略

2025年5月、米国の大手ヘルスケア企業「ユナイテッドヘルス・グループ(UnitedHealth Group)」の株価が大幅に下落しました。この出来事は、分散投資の重要性をあらためて浮き彫りにするものとなりました。

ユナイテッドヘルスの構成比率とインベスコ世界厳選株式オープン

ユナイテッドヘルスは、人気投信の一つ「インベスコ世界厳選株式オープン(為替ヘッジなし・毎月決算型)」にも組み込まれており、その構成比率はおよそ 3.88%(2024年12月時点)です。

本銘柄は、世界中の優良企業に分散投資するアクティブファンドで、投資家にとっては個別株のリスクを抑えながらグローバルな成長機会を享受できる設計になっています。

なぜユナイテッドヘルスは暴落したのか?

2025年5月中旬、ユナイテッドヘルスは以下のような理由から株価が年初来で半分近くにまで落ち込みました。

  1. 米司法省による刑事捜査の報道
    5月15日、ウォール・ストリート・ジャーナルが、ユナイテッドヘルスがメディケア・アドバンテージプログラムにおいて不正請求を行っていた可能性があり、米司法省が刑事捜査を開始したと報じました。株価は当日だけで約17%下落。
  2. CEOの辞任と業績見通しの撤回
    5月13日、CEOのアンドリュー・ウィッティ氏が辞任し、同時に2025年の業績見通しが撤回されました。医療費増加が想定より大きく、収益に悪影響が見込まれたためです。
  3. 事業モデルへの構造的疑念
    リスクスコア操作による保険請求の水増しなど、メディケア・アドバンテージ事業における構造的な問題が改めて浮き彫りとなりました。
  4. 経営の信頼低下
    2024年末には、保険部門のCEOがニューヨークで射殺される事件が発生。経営陣に対する不信感が長期的な株価への重荷となっていました。

出典:Google Finance

ヘルスケア=安全とは限らない。SOXLのようなセクター投資との対比

一般にヘルスケアセクターは「景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄」として位置づけられています。医療ニーズは不況でも減少しにくく、安定性が期待される分野だからです。しかし、実際には今回のユナイテッドヘルスのように、企業固有の不祥事や規制リスクが突如として表面化することで、大きな株価下落を招くことがあります。

一方で、テックや半導体などのグロースセクターは、常に高いボラティリティを抱えつつも、好材料が出れば急騰する可能性も秘めています。筆者は4月、米国の関税政策により一時的に下落したタイミングで、半導体セクターに3倍のレバレッジをかけたETF「SOXL」を購入しました。5月17日時点で、その価格はすでに約2倍まで回復しています。

出典:Google Finance

この経験を踏まえると、個別株投資やセクター集中投資は大きなリターンも期待できますが、それと引き換えに精神的な浮き沈みも非常に大きいと言えます。個別株 > セクター集中 > 米国中心 > 世界分散、というリスクピラミッドの通り、右に行くほどリスクは下がり、同時にボラティリティも穏やかになります。

ヘルスケア=安全、という思い込みを捨てることで、真に安定した資産運用の選択肢が見えてくるのではないでしょうか。

分散投資がもたらす穏やかなメンタル

個別株を保有していると、今回のような突発的な悪材料で大きく心が揺さぶられます。私が個別株に投資しないのは、そうしたリスクに備えるためです。将来上がるか下がるか不透明な銘柄に投資するよりも、分散されたファンドで平均点を狙うほうが、長期的には安定した投資成果を得られると考えています。

投資信託 vs 個別株:魚釣りのたとえ

個別株は「魚釣り」のようなものです。釣り場を探し、道具を揃え、時間をかけて魚を釣る。それは面白い体験でもありますが、釣果は運やタイミングに左右され、ゼロということもあるでしょう。

一方で、投資信託やETFは、漁師が取った魚を手数料を払って市場で買うようなものです。釣りのプロセスはなくとも、確実に魚が食卓に届きます。

日々の生活に忙しい人にとっては、こうした「プロに任せる」アプローチこそが、現実的かつ穏やかな選択肢となります。

インベスコ世界厳選株式オープンの実際のパフォーマンス

5月16日までの1ヶ月間のパフォーマンスを比較すると、インベスコ世界厳選株式オープンはS&P500に近い成績を維持しており、ユナイテッドヘルスの急落がなければ上回っていた可能性もあります。

具体的には、以下のような基準価額の推移が見られました:

  • 4月16日:基準価額 8,078円(分配金再投資後)
  • 5月16日:基準価額 8,727円
  • 1ヶ月のリターン:約 +8.03%

同期間におけるS&P500(eMAXIS Slim 米国株式)のリターンは約 +8.7% であり、非常に近い水準で推移しています。

これは、インベスコ世界厳選株式オープンがヘルスケアやITなど複数のセクターに分散されていることにより、個別銘柄の暴落(今回で言えばユナイテッドヘルスの下落)による影響が相対的に抑えられていたことを意味しています。

実際のチャート比較では、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と同等の水準で推移しており、分散効果がパフォーマンスに大きなブレを与えなかったことが確認できます。

出典:マネックス証券

松井証券の投信残高ポイントサービスでコストを軽減

アクティブファンドの手数料は、工夫次第で抑えることが可能です。たとえば、松井証券の「投信残高ポイントサービス」では、投資信託の保有残高に応じてポイントが還元され、その分、実質的な信託報酬を大幅に軽減できます。場合によっては、手数料が実質で半額近くになることもあります。

この仕組みを活用すれば、たとえば信託報酬が年1.903%のインベスコや、年1.727%のアライアンス・バーンスタインといった高コストのアクティブファンドであっても、実質的な負担が軽減され、個別株とのコスト差を小さくすることができます。

「手数料が高い=悪」と決めつけるのではなく、こうした還元サービスを活用してコストを抑える視点も投資判断には欠かせません。

ちなみに、私自身は松井証券で還元されたポイントをdポイントに交換し、さらにJALマイルに移行することで、旅行費用に充てています。

詳しくは以下のリンクからご確認ください。


まとめ

「分散投資」は退屈かもしれません。しかしその退屈さこそが、投資家のメンタルを守り、長期投資を可能にします。

ユナイテッドヘルスのような一流企業であっても、予測不可能なリスクから逃れることはできません。だからこそ、ファンドやETFを活用したリスク分散こそが、多くの投資家にとって王道の戦略となるのではないでしょうか。