子育て中のFIREは親のエゴ?7か月の経験が示すフルFIREよりバリスタFIREの現実性

地方FIRE生活

2024年8月末に会社員を退職し、FIRE(Financial Independence, Retire Early)を始めて7か月が経過しました。昨年末をピークに株式相場は不安定で、資産が減少傾向にあります。

相場は自分の思い通りには動かないものと割り切り、過度に悩まないよう心がけていますが、安定収入がないFIRE生活では、資産の取り崩しと市場の下落が重なり、減少スピードが加速するのは避けられません。資産形成期の上昇相場に乗るのとは逆の展開です。

今回は、子育て世代がFIREを目指すときにぶつかる現実的な壁と、私が7か月経験して気づいたことをまとめます。『子育て中のFIREって親のわがまま?』『フルFIREよりバリスタFIREが子育て世代に現実的な理由』という視点から、具体的なアイデアを一緒に考えていきます。


子育てとFIREの最大の壁:教育費と住居費の実態

子育て中の教育費がFIRE計画を圧迫する理由

FIREを目指す上で最も大きなハードルは、住居費と教育費です。特に子育て中の教育費は、子どもの年齢や人数に比例して増え続けます。お小遣い、習い事、学費といった出費が積み重なり、計画通りにコントロールするのは困難です

例えば、教育費やお小遣いのような流動的な費用を確保していても、これらは資産の一部となり、資産下落時に取り崩すことで減少ペースが加速します。その結果、想定よりも老後資金が減少し、老後に働く必要性が出てくる可能性も否定できません。

地方暮らしでも進学で増える住居費と仕送り

筆者には現在高校生の子どもがおり、子育てとFIREの両立を体感しています。地方に住むことで住居費や生活コストは抑えられていますが、子どもが進学で都市部の大学に通う場合、大学費用に加えて下宿代や仕送りなどのコストが発生します。

これらは想定以上の重い出費となるものの、親のFIRE計画に支障が出るからといって、子どもの希望する進路を制限する選択は避けたいと考えています。


子育て家庭で「4%ルール」が機能しない理由

4%ルールの理論と現実のギャップ

FIREの基本理論である「4%ルール」(資産の4%を毎年引き出しても元本が減らないという考え方)は、支出が安定している状況を前提としています。

しかし、子育て中の家庭では教育費の急増や突発的な出費で収支が乱れやすく、このルールをそのまま適用するのは難しいのが実情です。理論上は魅力的なルールも、実生活では柔軟な対応が求められ、期待通りに進まないケースが多々あります。

資産減少が老後資金に与える影響

特に、資産減少が加速すると、老後資金の不足が現実的なリスクとして浮上します。子育て中のFIREを目指すなら、4%ルールに頼るだけでなく、具体的なシミュレーションと余裕資金を準備することが不可欠です。


子育て中のFIREは親のエゴなのか?家族への影響を考える

子育てとFIREの優先順位の変化

極端に言えば、子育て中のFIREは親の理想であり、子どもにとっては「関係ない話」です。筆者の高校生の子どもを見ていても、思春期以降は親との時間より友達との付き合いを優先し、ファッションや趣味に自己投資する傾向が強まります。

FIREをする目的は、自由を得て「今を楽しむ」時間を増やすことだと筆者も考えていますが、子どもが独り立ちに向けて親離れしていく時期には、一緒に過ごす時間よりも、相談相手としての役割や金銭的支援が重要になってきます。

家族の時間を最大化する現実的な限界

家族の時間を最大化したい気持ちは理解できるものの、現実的にはその時間は徐々に減り、たまに確保できれば十分という状況に落ち着きます。

株価下落を理由に子どもの夢を制限するくらいなら、親が働き続けて資金を補うほうが後悔しない選択だと感じる人も多いのではないでしょうか。FIREというイレギュラーな生き方を子どもに見せるよりも、彼らの成長を支えることが優先事項になるのは自然な流れです。

FIRE前に考えるべき「家族にとっての意味」

こういった点を踏まえると、FIREに踏み切る覚悟は自分のエゴであり、家族にとって本当に意味のある選択なのか、事前に深く考えるべきだと感じます。子育て中のFIREを考えるなら、家族全体の幸せとのバランスが鍵です。


フルFIREよりバリスタFIREが子育て世代に現実的な理由

フルFIREの落とし穴:収入ゼロが生活を揺らす理由

コントロール不能な収入と支出の現実

フルFIREでは、収入が金融相場や社会情勢に左右され、自分の都合で調整できません。一方、支出は自分や配偶者が節約できても、子どものお出かけや習い事を「相場が悪いから」と我慢させるわけにはいきません。つまり、収入も支出も自分の意志ではどうにもならない状況に陥りがちです。

精神的な不安と時間の持て余し

収入が途絶えると、家計へのプレッシャーから精神的な不安定さが生まれたり、自由な時間を有効に使えず持て余してしまうリスクも出てきます。

社会とのつながりの喪失と子育てへの影響

さらに、社会との接点が減ることで孤立感を抱く可能性もあり、特に子育て中の親にとっては、子の成長に伴い学校行事や地域での役割が減る影響が心に重く響くかもしれません。

バリスタFIREのメリット:時間と精神のゆとり

一方で、働く量を適切にコントロールしたり、働き方を変えて責任を軽減するだけでも、時間的・精神的なゆとりが大きく生まれ、適度な社会参加を維持しつつ生活にメリハリをつけられる利点があります。こうした状況下で、子どもが巣立つまでは、フルFIRE(完全リタイア)にこだわるより、バリスタFIRE(部分的に働きながら資産を活用するスタイル)が現実的な選択肢と言えます。

バリスタFIREの実践例と子育て後の未来を描く

収入と資産運用を組み合わせた現実的な生活

バリスタFIREでは、例えばフリーランスやパートタイムで収入を得ながら資産運用を並行することで、急な出費にも柔軟に対応でき、精神的な余裕を持てます。

子どもの進学費用が急に増えても慌てず、下落相場でも労働収入があれば、無理に資産を取り崩さずに済むヘッジにもなります。フルFIREに近い状態の筆者にとっても、このスタイルなら収支のバランスが取りやすそうです。

働く時間を減らして自由を増やす調整術

また、時間に余裕がある分、働く時間を少しずつ減らし、家族や趣味に使える時間を増やしていくこともできます。筆者はフルFIREに近い生活の中で「必要なら働く」という柔軟な姿勢が大事だと実感しており、バリスタFIREならお金と生活のバランスを無理なく保てると考えています。

子育て後の未来:自由と新たな挑戦

子育てが一段落すれば、自分の時間や夫婦の時間を心から楽しむ生活が待っています。さらに、FIRE資金を基盤にセカンドキャリアを始める選択肢も広がります。

例えば、趣味の写真を仕事にしてみたり、地域活動で生きがいを見つけたりすることも可能です。筆者も、子どもが巣立った後の生活を見据え、資産を維持しながら新たな挑戦を楽しむプランを立て始めています。


結論:子育て中のFIREを成功させる柔軟な考え方

子育てとFIREを両立するためのシミュレーション

子育て中のFIREは、教育費や臨時出費でハードルが上がり続けます。地方暮らしでコストを抑えても、進学に伴う追加費用や資産下落による老後資金の目減りなど、想定外のリスクが潜んでいます。

だからこそ、フルリタイアにこだわらず、労働収入を組み合わせた柔軟なプランが現実的です。「お金が足りなくなったら働く」というシンプルな発想も、FIRE生活を無理なく続ける鍵となります。

そのために、子どもの進学時期や教育費のピーク、資産下落の最悪シナリオを想定したシミュレーションを事前にしておくと安心です。例えば、大学進学時の下宿費用や仕送りを試算し、どの程度の余裕資金が必要かを把握しておけば、フルFIREかバリスタFIREかの判断も現実的になります。

子育て後のFIREで広がる可能性

子どもが巣立ち、身軽になるタイミングを見据えつつ、自分のペースでFIREを目指すのが賢明です。子育て世代にとってFIREは、理想を追い求めるだけでなく、現実と向き合うバランス感覚が求められる挑戦なのかもしれません。

それでも、子育てを終えた先には、自分の時間を取り戻し、新たな可能性を探るチャンスが待っています。あなたはどう考えますか?