信用取引vsレバレッジETFvs証券担保ローン|投資で使える“良い借金”のメリット・デメリット

投資戦略

借金は本当に悪いものか?

「借金=悪」というイメージは根強いですが、資産形成や投資の世界では必ずしもそうではありません。借金をどう使うかによって、人生を縛る負担にもなれば、資産を加速させる強力な武器にもなり得ます。

筆者自身は現在、レバレッジETFなどのレバレッジ商品を少額のサテライト運用として活用し、さらに証券担保ローンを資産全体の約10%まで利用することで資金効率を高めています。一方で信用取引については利用していません。投資を始めた当初にFXのハイレバレッジ取引で大きな損失を経験し、投機的な取引がメンタル面にも資産面にも大きなリスクをもたらすと痛感したからです。

また、不動産投資についても筆者は行っていません。不動産は利害関係者が多く、物件の選定も複雑で流動性が低いため、失敗した際のインパクトが大きいと考えています。その代わりに、インベスコ 世界厳選株式オープン(通称:世界のベスト)を証券担保に借入を行い、そこで調達した資金を再び世界のベストに投じる戦略を採用しています。流動性が高く、投資判断の修正や出口戦略も柔軟に取りやすいため、これは筆者にとって「良い借金」の典型的な使い方といえます。

本記事では、『金持ち父さん 貧乏父さん』をはじめとする著名人の引用を交えながら「良い借金」と「悪い借金」の違いを整理しつつ、株式投資における信用取引・レバレッジ商品・証券担保ローンという3つの代表的な手段を比較します。それぞれの特徴、メリット・デメリット、手数料や代表的な商品まで詳しく解説し、投資初心者からFIREを目指す方まで実践的に役立つ情報をお届けします。


筆者の前提とスタンス

投資スタイル

レバレッジETFは少額のサテライト運用に留め、コア資産はS&P500と世界のベストで分散し、現金フローを重視しています。証券担保ローンは資産全体の約10%の範囲で活用し、借入コストと期待リターンのスプレッドが取れる範囲に限定しています。

信用取引を使わない理由

短期での建玉管理や追証リスク、メンタル面での負荷が高いためです。特に、過去にFXのハイレバレッジ取引で大きな損失を経験した反省から、投機性の高い手段は避けています。

不動産投資を避ける理由

利害関係者が多く、選定が複雑で流動性も低いため、失敗した際のリカバリーが困難です。同じレバレッジを活用するなら、流動性と機動性が高い株式や投信を選好します。手元に資産があるなら、不動産よりも証券担保ローンを活用した株式投資の方がリスクは小さく、利回りも高められると考えています。


「良い借金」と「悪い借金」──借金は中立、使い方がすべて

『金持ち父さん 貧乏父さん』では、借金を「悪い借金(消費のための借入)」と「良い借金(資産を生むための借入)」に分けています。借金は本来中立的で、使い方次第で資産を増やす道具にも、人生を縛る鎖にもなります。

  • 悪い借金: クレジットカードの高金利リボ払いや消費財ローンなど。キャッシュフローを圧迫するだけ。
  • 良い借金: 収益不動産・事業・投資のための借入。借入自体が収入源に転換されうる。

富裕層の典型「Buy, Borrow, Die」戦略

  1. 資産(株式や不動産など)を購入する
  2. その資産を担保に低金利で借り入れる
  3. 借入で生活費や追加投資に回す(資産は売らない)
  4. 最終的に相続の仕組みを活かし次世代へ承継する

借金を「消費」ではなく「運用+税戦略」に組み込む点が肝です。

注意喚起:レバレッジがもたらす影と守るべき条件

  • レバレッジ過多のリスク: 追証・強制解消・ドローダウン拡大で破綻しやすい。
  • 守るべき2条件: ①返済可能性(キャッシュフロー管理) ②借入コストを上回る期待リターン。

信用取引・レバレッジETF・証券担保ローンを徹底比較

1. 信用取引(買い・空売り)

概要: 保証金を預け、自己資金の約3倍まで売買可能。買いに加えて空売りも可能で、短期戦略の幅が広がります。

  • メリット: 少額で大きな取引が可能/下落相場で空売りができる/短期売買の回転効率が高い
  • デメリット: 追証リスク/建玉に期限(6カ月)/メンタル負荷が大きい
  • 向いている人: デイトレードやスイング中心の短期派/板とリスク管理に自信がある人

2. レバレッジ商品(ETF・投資信託)

概要: 指数の2倍・3倍の値動きを目指す。例:SOXL(米半導体3倍)。信用口座不要で購入可能。

  • メリット: 少額で値幅を取りやすい/口座要件が緩い/上昇トレンドで爆発力がある
  • デメリット: 日次連動ゆえの“減価”/下落時の損失拡大/分配金は期待しにくい
  • 向いている人: トレンドフォロー/短中期のサテライト運用/リスク許容度が高い人

3. 証券担保ローン

概要: 保有株式や投信を担保に低金利(年1〜3%)で借入。売却せず流動性を確保し、再投資可能。

  • メリット: 資産を売らずに資金化/低金利で利用できる/投資機会を逃しにくい
  • デメリット: 担保価値下落で追加担保や返済リスク/長期の利払い負担/借入依存の危険
  • 向いている人: 長期保有のコア資産がある人/安定収入や分配金がある人/資産効率を重視するFIRE層

比較表(特徴・コスト・向き不向き)

項目信用取引レバレッジETF/投信証券担保ローン
代表的商品個別株・指数の信用建てSOXL, TQQQ、レバレッジFANGなど野村Webローン、楽天証券の証券担保ローン
レバレッジ倍率約3倍(保証金規制)2〜3倍(設計固定)担保率50〜70% → 実質1.5〜2倍
主要コスト買建金利2.5〜3%+貸株料 等信託報酬0.9〜1.0%前後年1.5〜3.0%程度(借入金利)
強み空売り可/短期回転の自由度口座要件が軽く手軽に高倍率売却せず資金化/税務・配当方針を維持
弱み追証・期限・メンタル負荷減価・下落時の損失拡大担保価値下落で追加対応/長期の利払い
相性の良い投資家短期売買派・裁量に自信トレンドフォロー/サテライト運用FIRE層/分配金で利払い可能

実践のコツ:「良い借金」に変える3原則

  1. リスク上限を明確に: 総資産に占める借入比率(例:10%)や最大ドローダウン許容を先に決める。
  2. キャッシュフロー優先: 利払い原資(配当・分配金・給与など)を確保。利払いが期待リターンを上回る局面では速やかに縮小。
  3. 出口とロールダウン: 下落時は段階的に縮小。上昇時はリバランスで過度なレバレッジ集中を避ける。

まとめ:借金を「敵」にも「味方」にもするのは自分

信用取引は短期の攻め、レバレッジETFはトレンド取りのサテライト、証券担保ローンは長期の資産効率化──それぞれ役割が異なります。重要なのは、借入コストを上回るリターンの確度と、キャッシュフローで耐えられる力です。

筆者は、不動産ではなく流動性の高い株式や投信を担保にすることで、柔軟性と機動性を重視しています。世界のベストを担保に同ファンドへ再投資する手法は、筆者にとって「良い借金」の実用的な形です。借金を正しく理解し、ルールを設計した上で運用できるなら、借金は恐れる対象ではなく、資産形成を加速させる強力な味方になります。