2025年の初め、筆者は野村Webローンの利用を開始しました。理由はシンプルで、「インデックス投資の複利効果を最大化しながら、キャッシュも確保したい」というニーズに応えてくれる手段だったからです。
筆者はこれまで、S&P500やNASDAQ100などのインデックス投資信託を積み立て・放置するスタイルで、長期運用によって資産を順調に増やしてきました。いわゆる「複利の力」による資産形成です。
しかし、資産が増えるにつれ「取り崩しにくい心理」に陥るようになりました。インデックスを売却すると複利効果が弱まってしまうため、なかなか手を付けづらくなります。そうした中で筆者が出会ったのが「証券担保ローン」でした。
たとえば、インデックス投信はそのまま保有し、別に担保を使ってお金を借り、そのお金で高配当型の投信を買い、生活費やキャッシュフローを得る。これにより、資産を減らさずキャッシュを生み出す仕組みができると考えたのです。
筆者の実体験から見る活用方法
筆者は2025年2月より野村Webローンを活用しており、総額4,000万円の有価証券を担保に1,000万円の借入を行っています。担保資産の内訳は、eMAXIS Slim S&P500およびオルカン(オール・カントリー)で約3,000万円分、インベスコ世界厳選株式オープンが1,000万円分となっています。
借入資金1,000万円は、松井証券口座にてインベスコやその他の高配当型投資信託の購入に充てており、現在も運用を継続中です。野村証券側で担保としているインベスコからは、毎月税引き前でおおよそ16万5,000円の分配金が得られ、それは受け取り次第、即座にローン返済に充てています。一方で、松井証券側からは月あたり税引き前で30〜40万円程度の分配金があり、こちらは再投資へと回しています。
運用方針としては、「担保率200%を下回らないこと」を基本としています。2025年4月にはトランプ前大統領の関税発言により市場が急落し、一時的に担保率が180%台まで下がったものの、借入額と同程度のキャッシュを確保していたため、必要があれば即時返済により担保率を回復できる準備ができていました。実際には想定ほどの下落とはならず、現在では再び200%超にまで回復しています。
証券担保ローンの最大の魅力は、担保としている有価証券を保持したまま運用を続けられる点です。もし運用利回りが借入金利を上回れば、実質的には無利子で資金を引き出すような効果が得られます。また、不動産とは異なり、必要に応じてオンライン上で迅速に返済可能という高い流動性も強みです。
リスク管理と運用方針が明確であれば、証券担保ローンは資産を保有する個人にとって、資金効率と投資機会の両面で強力な武器となり得るでしょう。
野村Webローンと楽天銀行 証券担保ローンの比較

※出典:楽天銀行 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20250619-01.html
2025年6月には楽天銀行からも証券担保ローンが提供され、証券担保ローンはますます身近な選択肢となっています。本記事では、実際に筆者が半年以上運用してきた野村Webローンと、新たに始まった楽天の証券担保ローンを比較しながら、どちらがどのような投資家に適しているかを整理します。
項目 | 野村Webローン | 楽天銀行 証券担保ローン |
---|---|---|
金利(2025年6月時点) | 年1.90%(変動・固定期間あり) | 年1.875%〜3.875%(残高連動) |
担保対象 | 株式・投信・債券(NISA不可) | 国内株式・ETF(投信不可) |
担保評価率 | 株式50%、債券80%、投信60% | 株式時価の60% |
借入可能額 | 10万円〜5億円(1万円単位) | 1万円〜(担保評価額の60%まで) |
返済方式 | 自由返済、6ヶ月ごとに更新 | 即時返済、残高自動清算型 |
対応口座 | 野村証券+野村信託銀行 | 楽天証券+楽天銀行 |
実際の活用シナリオと分配金シミュレーション
以下はシミュレーションモデルです。野村Webローンで1,000万円分のインベスコ世界厳選株式オープンを担保に預け、300万円を借り入れたケースを想定します。その300万円で松井証券口座にて同ファンドを購入し、分配金を生活費の一部に充てるスタイルをモデルとしています。
このときの前提条件は以下の通りです:
- 基準価額:8,500円/1万口
- 分配金:150円/1万口あたり/月
- 投資額:1,000万円(野村側)、借入額:300万円(松井側で再投資)
証券会社 | 購入口数(概算) | 分配金(月・税引前) | 分配金(月・税引後) | 分配金(年・税引後) |
---|---|---|---|---|
野村証券(担保) | 約11,764,705口 | 約176,470円 | 約140,691円 | 約1,688,292円 |
松井証券(再投資) | 約3,529,411口 | 約52,941円 | 約42,200円 | 約506,517円 |
このように、同一銘柄でも預け入れと再投資の2段構えにすることで、月間およそ18万円超(税引後)ものキャッシュフローが得られます。
なお、借入金300万円に対する金利が年1.90%であれば、年間利息は約57,000円。対して松井側の分配金(税引後)は約50万円超となるため、借入金のコストを上回る安定したキャッシュフローが見込める設計になります。
楽天銀行ローンの金利構造に注意
楽天の証券担保ローンは、借入残高に応じて金利が変動する段階制です。
- 1,000万円超:年1.875%
- 100万円超〜1,000万円以下:年2.875%
- 100万円以下:年3.875%
返済を進めて残高が減ると金利が上昇する仕組みなので、「少しずつ返済していく」スタイルには向いていません。
対して、野村Webローンは残高に関わらず一定金利で、少額返済戦略にも適しています。
結論:2025年6月時点では野村Webローンが本命
金利構造と運用戦略の相性
楽天は1,000万円を超える残高でこそ金利1.875%と最安ですが、残高が減るたびに2.875%、3.875%と段階的に上昇していきます。逆に野村Webローンは借入額にかかわらず1.90%で安定しており、運用計画の立てやすさが際立ちます。
担保対象と再投資の自由度
楽天の担保対象は国内株式・ETFに限定されていますが、野村は株式だけでなく、債券や投信にも対応。とくに投資信託を担保に取れる点は大きく、筆者のような分配型ファンドやインデックス投信を使った再投資戦略と好相性です。
実運用の視点で見た「一択」の理由
結局のところ、2025年6月現在のサービス内容を見れば、投信も含めた広範な資産を担保に使える「野村Webローン」が、FIRE後のキャッシュ確保と資産成長の両立を目指す投資家にとって最適な選択肢といえるでしょう。
利用までに多少の手間はかかるものの、それ以上に設計の柔軟性とリスクマネジメントのしやすさでリターンを見込める点が魅力です。
資産を保有していても使いづらさを感じている方や、複利効果を活かしながら生活費を確保したいと考えている方にとって、証券担保ローンは検討に値する仕組みです。目先の金利差だけでなく、自分の運用スタイルや再投資戦略との相性を見極めることが、最適なローン選択につながるでしょう。