暴落時の仕込み:高配当投信vs高配当ETF(JEPI・FEPI)の最適解

投資戦略

2025年4月2日、米国発の相互関税措置をきっかけに始まった世界的な株価大暴落が止まる気配を見せていません。主要株価指数は連日下落し、市場は混乱状態です。しかし、長期的な視点を持つ投資家にとって、こうした暴落は「仕込みの好機」とも言えます。

過去を振り返ると、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでは、底値付近で投資した人々がその後の市場回復で大きな利益を得ました。特に高配当銘柄は、株価下落で配当利回りが急上昇し、キャッシュフローを重視する投資家にとって魅力が増します。

普段から積み立て投資を続けている人は淡々と運用を継続すれば十分ですが、稀な暴落時に余剰資金を投入し、将来の収益基盤を強化しようと考える投資家も多いでしょう。

本記事では、インカムゲインを目的とした投資に焦点を当て、高配当投資信託「インベスコ世界厳選株式オープン(毎月分配型)」と高配当ETF「JEPI」「FEPI」をS&P 500と比較し、2025年4月の暴落局面での最適な選択肢を検討します。


商品概要:3つの高配当投資を徹底比較

以下に、比較対象の3商品の概要を示します。JEPIを含めたのは、S&P 500を原資産とするため、ボラティリティの違いを把握しやすくするためです。

インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>

日本を含む先進国株式に投資するアクティブファンド。成長性・配当・割安性を重視し、MSCIワールド・インデックスを上回る運用を目指します。

為替ヘッジなし、毎月分配型で、信託報酬は1.903%(税込)。2024年9月時点の1年リターンは約22%(税引前、最新運用報告書要確認)。1999年設定で純資産は成長中。新NISA対象外だが、長期投資に適した選択肢です。

JPMorgan Equity Premium Income ETF (JEPI)

S&P 500構成銘柄から低ボラティリティ・バリュー特性の米国大型株を選び投資するアクティブETF。コールオプションの売却(エクイティ・リンク・ノート経由)で追加収益を確保し、毎月分配。

信託報酬は0.35%(年率)と低コスト。2024年10月時点で分配利回り約7.47%、1年リターン約8.03%(税引前)。2020年5月設定、資産規模約39.42億ドル。安定収入とリスク低減を重視する投資家向け。

Rex FANG & Innovation Equity Premium Income ETF (FEPI)

テスラ、アップル、アマゾンなど米国の主要15テクノロジー企業に投資するアクティブETF(Solactive FANG Innovation Index連動)。カバードコール戦略でオプション収入を追求しつつ株価上昇も狙う。

信託報酬は0.65%(年率)。2024年10月時点で分配利回り約25.4%、1年リターン約8.5%(税引前)。2023年10月設定、資産規模約2.5億ドル。高配当とテクノロジー投資を求める人向け。


上昇局面・下落局面での値動き比較

各商品のS&P 500との値動きを、直近1年間(2024年12月30日時点)の騰落率を中心に分析します。

インベスコ vs eMAXIS Slim S&P500

円建てで比較すると、インベスコとS&P 500は1年間のパフォーマンスが拮抗。2024年12月30日時点では、S&P 500が+20.40%、インベスコが+13.88%で、両者とも上昇局面で堅調に推移しています。

出典:マネックス証券

JEPI・FEPI vs S&P500

ドル建てでは、S&P 500の+13.54%に対し、JEPIが+1.33%、FEPIが-9.02%。この差は両ETFが毎月分配金を支払う特性によるもので、分配金を再投資すれば差は縮まりますが、毎月利益を吐き出す設計上、上昇局面での値動きは抑えられがちです。カバードコール戦略により、値幅が取りにくい点も特徴です。

※出典:Google finance

高配当投信か高配当ETF、どちらを優先すべきか?

値動きを踏まえ、注目すべきはインベスコの「特別分配金」です。これは基準価額が元本(個別元本)を下回った際に支払われ、元本の一部を取り崩して還元する仕組みで、普通分配金とは異なり非課税。

基準価額が元本を超えない限り元本の取り崩しとなり、高い株価で買い増すとその恩恵が得られにくい一方、割安時に仕込むと効果を発揮します。

対して、JEPIやFEPIには特別分配金の概念がなく、カバードコール戦略により上昇局面でのリターンが制限され、株価上昇でも一定額を超えにくい傾向があります。

筆者は、限られた資金での投資なら、暴落時の割安局面でインベスコを優先し、市場回復後にJEPIやFEPIを追加して分配金を増やす戦略が賢明だと考えます。

暴落時の買い方:一気に買わず少しずつが賢明

2025年4月の暴落が続く中、いつ底値に達するかは誰にもわかりません。市場が下がり続ける可能性があるため、一気に資金を投入するのはリスクが高いと言えます。

普段から積み立て投資をしている人はそのペースを維持すれば十分ですが、余剰資金で追加投資を考える場合、筆者は「少しずつ買い付ける」アプローチを推奨します。

例えば、インベスコやJEPI・FEPIを狙うなら、一括購入で底値を逃すリスクを避け、数回に分けて購入することで平均取得単価を下げられます。暴落はチャンスですが、焦らず段階的に仕込むことで、さらなる下落にも対応しつつ将来のリターンを最大化できるでしょう。


まとめ:暴落時に買うべき選択肢

2025年4月の株価大暴落は長期投資家にとって仕込みの好機です。本記事では、高配当投資信託「インベスコ世界厳選株式オープン」と高配当ETF「JEPI」「FEPI」をS&P 500と比較しました。

インベスコは上昇局面でS&P 500(+20.40%)にやや劣るものの+13.88%と堅調。一方、JEPI(+1.33%)とFEPI(-9.02%)はカバードコール戦略で値動きが抑えられ、分配金再投資でもS&P 500(+13.54%)に及びません。

インベスコは特別分配金の特性を活かし、割安時に仕込むことで優位性を発揮。JEPIとFEPIは安定した分配金が魅力です。

筆者は、暴落時にまずインベスコを買い、回復局面でJEPIやFEPIを追加する戦略を推奨します。今の底値圏で資金配分を決めることが、将来の収益を左右します。