山登りから下山へ:投資信託の取り崩しと高配当で実現するFIRE生活設計

地方FIRE生活

「登る」から「下る」へ――投資信託の取り崩しで描くFIRE生活の設計図

投資信託の運用は、まるで山登りと下山のような二つのフェーズに分けられます。山を登る過程では、コツコツと資産を積み上げ、将来への安心感や達成感を得られます。

一方、下山――つまり投資信託の取り崩し――は、資産の消耗や市場環境の変化、予測不能なリスクにどう対応するかが鍵となります。

本記事では、FIREを実現するための「投資信託の取り崩し戦略」を、私の具体的な資産構成や計画とともに詳しく解説します。投資信託を取り崩す難しさとその解決策を紐解き、FIRE生活を長期的に支えるヒントをお届けします。

投資信託の取り崩しが難しい理由とは? 山登りと下山の違い

投資信託を積み上げる「登り」はシンプルです。毎月一定額を投資し、複利効果で資産が成長するのを待つだけ。しかし、「下山」である取り崩しは、以下のような独特の課題を伴います。

1. リスク管理の難しさ:市場タイミングとの戦い

株価が下落するタイミングで取り崩すと、資産の目減りが加速し、回復に時間がかかるリスクがあります。例えば、2022年のような弱気相場で取り崩しを始めると、元本が減り、成長機会を逃す可能性も。市場環境を見極めた柔軟なプランが不可欠です。

2. 精神的負担:資産減少への心理的プレッシャー

資産額が減っていくのを見るのは、積み上げ時の喜びとは対照的にストレスです。FIREでは資産が「自由の基盤」であり、その減少が生活不安に直結する感覚を避けられません。この心理的ハードルを乗り越える戦略が求められます。

3. 長寿リスク:想定外の長生きに備える

日本人の平均寿命は延び、90歳以上生きる可能性も高まっています。40代でFIREした場合、50年以上資産を持続させる必要があるかもしれません。取り崩し額のバランスが難しく、過剰に抑えると生活が窮屈に、多いと老後資金が枯渇します。

これらの課題を踏まえ、長期視点で柔軟な取り崩し戦略を構築することがFIRE成功のカギです。

なぜ投資信託の取り崩しを選ぶのか? 配当株との比較で見るメリット

FIREでは、配当株とインデックス投資(投資信託)の選択が分岐点です。私は「米国株インデックス投資」を軸に選びました。その理由を配当株と比較して解説します。

1. 成長力の違い:長期的な資産拡大を重視

インデックス投資はS&P500やNASDAQ100のように成長性の高い企業を含み、配当株を上回る資本成長が期待できます。配当株は安定収入を提供しますが、再投資の手間や成長性の限界が課題。インデックスは複利効果を効率的に活用し、資産寿命を延ばします。

2. 税効率と柔軟性:FIRE生活に最適化

米国株配当には20.315%の日本税と10%の外国税が課され、手取りが減ります。FIRE後は所得増で国民健康保険料が上がるリスクも。一方、インデックスは必要な分だけ売却でき、キャピタルゲイン課税(約20%)のみで済み、税効率と柔軟性に優れます。

3. 長期リターンの優位性:市場成長の恩恵

米国株市場は過去数十年、年平均7~10%の成長を記録。この成長力を背景に、インデックスは配当株を長期で上回る可能性が高い。特に50年以上のFIREでは、この差が資産残高に大きく影響します。

以上の理由から、「投資信託の取り崩し」をFIREの基盤に据えました。次に具体的な計画を見ていきましょう。

私の資産構成とシミュレーション前提

現在の資産構成(2025年3月5日時点)

  • インデックス投資信託:55%
    特定口座、NISA口座、iDeCoで運用。米国株(S&P500、NASDAQ100)を中心に長期成長を重視。
  • 高配当投資信託:30%
    特定口座で運用し、安定収入源として普通分配金や特別分配金を活用。
  • 現金:15%
    基礎生活費3年分(月40万円×36ヶ月=1,440万円)を確保し、市場下落時のバッファに。

シミュレーションの前提条件

  • 基礎生活費:月40万円(年間480万円)。
  • インデックス投資の期待利回り:S&P500とNASDAQの歴史的データに基づき年7%を仮定。
  • 取り崩し開始:特定口座(インデックスと高配当投資信託)は2025年から、NISAは10年後、iDeCoは20年後。
  • NISA運用方針:積み立て枠を埋めるまで運用を継続し、非課税メリットを最大化。
  • iDeCo運用方針:企業型DCからの移行資金を運用し、積み立ては終了。

投資信託の取り崩し戦略:段階別の具体プラン

特定口座の運用と取り崩し

インデックス投資信託

  • 取り崩し計画:2025年から月5~10万円。市場状況に応じて調整し、生活費の補助に活用。
  • 運用商品と取り崩し率:
    • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):月0.5%
    • ニッセイNASDAQ100インデックスファンド:月0.5%

高配当投資信託

  • 取り崩し計画:
    • 普通分配金の場合:月40万円を生活費の主力に。
    • 特別分配金(元本取り崩し)の場合:月25~30万円で資産寿命を意識。
  • ポイント:インデックスで成長を維持し、高配当投資信託で生活費の大半を賄う二段構え。分配金が減少した場合は現金やインデックスで補填。

NISA口座の運用と取り崩し

  • 保有額:800万円(2025年3月時点)
  • 成長見込み:年7%で10年後には約3,400万円。
  • 取り崩し計画:
    • 50代:月20~30万円(特定口座と併用し抑えめに)
    • 60代以降:月20万円(特定口座終了後の主力に)

ポイント:非課税メリットを活かし、取り崩しを遅らせて税負担を最小化。子育て後の旅行や趣味に活用予定。

iDeCoの運用と取り崩し

  • 保有額:950万円(2025年3月時点)
  • 成長見込み:年7%で20年運用し、約3,800万円。
  • 取り崩し計画:60代~90代で月20万円(年金と併用し老後資金に)。
  • ポイント:長期運用で複利効果を最大化し、老後の安定資金を確保。ただし、2025年3月5日時点で議論中の退職金税制見直しが影響する可能性あり。政府はiDeCo一時金と退職金の税優遇を見直し、「一時金受取から5年後の退職金控除適用」が「10年に延長」される案を検討中(2025年度税制改正大綱で決定予定)。施行されれば、60歳でiDeCo一時金を受け取ると、退職金控除をフル活用するには70歳まで待つ必要があり、FIREプランに影響も。対策として、一部を年金形式で受給し税負担を分散させる選択肢を検討。

取り崩し全体イメージ:ライフステージ別のプラン

資産カテゴリ40代50代60代70代80代90代
特定口座(インデックス)月5~10万円月5~10万円
特定口座(高配当投信)月25~40万円月25~40万円月25~40万円月25~40万円月25~40万円月25~40万円
NISA口座運用のみ月20~30万円月20~30万円
iDeCo運用のみ運用のみ月20万円月20万円月20万円月20万円
年金月10万円月10万円月10万円月10万円

注:市況や分配金の状況、税制改正に応じて調整予定。

高配当株と現金の役割:安定性と柔軟性の両立

高配当投資信託の安定性:生活費の基盤

普通分配金で月40万円、特別分配金で月25~30万円のキャッシュフローを提供し、生活費の主要部分をカバー。市場下落時のインデックス取り崩しを抑え、資産保護に貢献。ただし、分配金の減額や元本取り崩しリスクを想定し、過度な依存は避けます。

現金の緩衝材:FIRE生活の精神安定剤

1,440万円(生活費3年分)は市場暴落や分配金減少時の「安全弁」。取り崩しを一時停止し、資産回復を待つ余裕を生み、リスク資産運用への心理的ハードルを下げます。

トリニティスタディと4%ルール:柔軟な取り崩しの重要性

「4%ルール」は資産を持続させる目安ですが、高配当投資信託に依存する戦略では市場環境や分配方針の変化に対応する柔軟性が不可欠。私は「必要な時に大胆に使い、楽しむ」ことを重視。お金は使って初めて価値を発揮し、トリニティスタディを参考にライフステージで調整することがFIRE成功の秘訣です。

終わりに:お金より大切なものを見据えて

投資信託の取り崩しは、「人生を豊かにする手段」です。資産を守ることに囚われすぎず、家族との時間、新しい挑戦、心を満たす経験に使うことが目的。FIREは自由への旅であり、資産はその力強い味方です。

最高の思い出を作るため、賢く、柔軟に、大胆に資産を活用しましょう!