「登る」から「下る」へ――投資信託の取り崩しは、まるで山登りと下山のようなものです。 山を登る過程では、資産をコツコツ積み上げていく楽しみや安心感がありますが、下山となると体力や地形の違い、さらには予測できないリスクを考慮する必要があります。
本記事では、FIRE生活を実現するためにどのように投資信託を取り崩していくべきか、私の具体的な計画とともに解説します。
投資信託の取り崩しが難しい理由
山登りと下山の違い
投資信託の取り崩しは、山登りで得た達成感とは異なる挑戦を含んでいます。以下の点がその理由です。
- リスク管理が難しい:株価が下落するタイミングで資産を取り崩すと、回復に時間がかかる可能性があります。
- 精神的負担:画面上の資産額が減少するのを見るのは、心理的なストレスとなり得ます。
- 長寿リスク:予想より長生きした場合、資産を持続的に活用できる計画が必要です。
これらの課題を踏まえ、長期的で柔軟な取り崩しプランを立てることが大切です。
投資信託の取り崩しを選んだ理由
配当株は安定した収入が得られる反面、米国株のインデックス投資(インデックス)は長期的な資産成長において優れた選択肢となる理由があります。
- 成長力の違い
インデックスは成長性の高い企業を多く含み、配当株を超える資本成長が期待できます。再投資を必要としないため、複利効果を効率よく活用できます。 - 税効率と柔軟性
米国株の配当には20.315%の日本の税金と10%の外国税がかかります。FIRE後は確定申告で所得が増え、国民健康保険料が上がる可能性も。一方、インデックスは必要分だけ売却でき、税効率が良く柔軟です。 - 長期での大きな差
米国株市場の成長性により、長期ではインデックスのリターンが配当株を大きく上回る可能性が高いです。
私の資産構成と前提条件
現在の資産構成
- インデックス:60%(特定口座、NISA口座、iDeCo)
- 高配当株:25%
- 現金:15%(3年分の基礎生活費)
※2024年12月19日現在
シミュレーション条件
- 基礎生活費:月40万円とする。
- インデックス投資の利回り:S&P500とNASDAQのため、年7%を仮定。
- 特定口座と高配当株:取り崩しと配当の利用は2025年から。
- NISA口座:取り崩しは10年後から、積み立て枠を埋めるまで運用を継続。
- iDeCo:積み立てはせず企業型DCを移行した資金を運用し、20年後に取り崩し開始。
投資信託の取り崩し戦略
特定口座の運用と取り崩し
特定口座には現在5200万円を保有しており、2025年から月35万円程度を取り崩す予定です。主な運用商品は以下の通りで、レバレッジ商品は月1%、その他は月0.5%の定率で取り崩します。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):月0.5%取り崩し
- ニッセイNASDAQ100インデックスファンド:月0.5%取り崩し
- auAMレバレッジNASDAQ100:月1%取り崩し
他の保有商品は以下よりご覧ください。
ポイント
株価下落時には取り崩し額が下がるため、必要に応じて現金や高配当株から補填する柔軟性を持たせます。
NISA口座の運用と取り崩し
現在NISA口座に500万円を保有しており、枠を活用することで10年後には約3400万円まで成長する見込みです。50代から活用を開始し、取り崩しの序盤は特定口座と併用して抑えめに進め、併用終了後に取り崩し額を増やす計画です。子育てが終わった後の楽しみのために、これらを有効活用する予定です。
- 50代:月20万~30円程度
- 60代以降:月20万円程度
ポイント
NISAの非課税期間を最大限に活用し、取り崩しを遅らせることで税効率を最適化します。
iDeCoの運用と取り崩し
iDeCoには現在980万円を保有しており、積み立ては終了していますが、20年間の運用で約3800万円に成長する見込みです。この資金は、60代以降の生活費を補う重要な役割を果たします。
- 60代~90代:年金の受給に加え、月20万円を取り崩します。
ポイント
iDeCoの長期運用で複利効果を最大限に引き出し、老後資金として確保します。
取り崩しの全体イメージ
以下は資産の取り崩しプランを簡潔にまとめた表です。今後の市況やライフイベントで修正する可能性もございます。
資産カテゴリ | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 | 90代 |
---|---|---|---|---|---|---|
特定口座 | 月35万円 | 月35万円 | – | – | – | – |
NISA口座 | 運用のみ | 月20~30万円 | 月20~30万円 | – | – | |
iDeCo | 運用のみ | 運用のみ | 月20万円 | 月20万円 | 月20万円 | 月20万円 |
高配当株 | 月10~15万円 | 月10~15万円 | 月10~15万円 | 月10~15万円 | 月10~15万円 | 月10~15万円 |
年金 | – | – | 月10万円 | 月10万円 | 月10万円 | 月10万円 |
高配当株と現金の役割
高配当株の安定性
高配当株は月15~20万円の安定収入を提供し、株価下落時の取り崩しを抑えることで資産保護に寄与します。ただし、市況悪化により保有株が無配に転じる可能性も想定しています。
現金の緩衝材としての重要性
生活費の3年分に相当する現金を保有しておくことで、大幅な株価下落時にも取り崩しを避けられます。この「安全弁」は、精神的な安定をもたらし、FIRE後にリスク資産を運用する上で非常に重要な役割を果たします。
トリニティスタディと4%ルール:柔軟な活用を
「4%ルール」は資産を持続的に取り崩す指針として有名ですが、これに固執しすぎるのは本末転倒です。人生の終わりに大きな資産を残しても、それを活かせなければ意味がありません。これまでの努力を振り返りながら、必要な時には大胆に使い、調整しながら楽しむことが大切です。お金は使って初めてその価値を発揮します。
終わりに:お金より大切なものを
資産取り崩しは、単なる数字の管理ではなく、人生を豊かにする手段です。資産を守ることに縛られず、それを使って家族や友人との時間、新しい経験、心を満たす瞬間を増やすことが本来の目的です。
資産は人生を支える力強い味方です。それを活用し、最高の思い出を作りましょう!