「外国税額控除で税金を取り戻せる」。その通りだが、落とし穴があった。
FIRE達成後、私は米国株を保有していた時期がありました。米国株の配当は現地で源泉徴収されるため、確定申告で「外国税額控除」を申請すれば一部を取り戻せます。
でも私はこの申請をやめました。
FIREして金融資産だけで暮らす場合、特定口座やNISAを利用することで確定申告が不要になります。確定申告が不要であれば、国民健康保険料の計算にも影響しません。しかし外国税額控除を申請するためには確定申告が必要になる。その結果、本来影響しなかった国保料が増加するリスクが生まれます。
さらに2023年(令和5年)分の確定申告から、住民税の申告不要制度が廃止されました。これにより外国税額控除を申請すると住民税にも影響が及ぶようになり、以前より国保料・住民税増加のリスクが高まっています。
この記事では、FIRE後の確定申告が家計全体にどう影響するかを、私の実体験と制度の正確な情報をもとに解説します。
この記事でわかること
- 外国株の配当に二重課税が発生する仕組み
- 外国税額控除の申請が国保料増加につながる理由
- 2023年税制改正で何が変わったか(住民税申告不要制度の廃止)
- 特定口座・NISAを使えば確定申告が不要になる仕組み
- 私が外国株の配当受け取りをやめた判断の経緯
この記事を書いた人:どらじ
高卒・非正規スタートから外資系転職を経て14年間の長期投資でFIRE達成。2024年に40代でFIRE達成(総資産1億円超)。月100万円の分配金収入で地方生活を継続中。Xフォロワー11,700人。サンワード証券セミナー講師(2026年)。
1. 外国株の配当には「二重課税」が発生する
外国株(特に米国株)の配当を受け取ると、税金が2回かかります。まず現地(米国)で10%が源泉徴収され、次に日本で残額の約20.315%が課税されます。
たとえば米国株で配当100円を受け取ると、米国で10円引かれて90円になり、さらに日本で90円×20.315%≒18円が引かれ、手元に残るのは72円程度。実質的に約28%の税負担になります。
「外国税額控除」という救済制度
この二重課税を一部解消するのが「外国税額控除」という制度です。確定申告で申請することで、海外で徴収された税金(米国の場合10%分)の一部を取り戻せます。「だったら申告した方が得では」と思いますが、FIRE後・国保加入者には重要な落とし穴があります。
2. 2023年税制改正で何が変わったか
外国税額控除を理解する上で、2023年(令和5年)分から始まった税制改正を把握しておくことが重要です。
廃止された「住民税の申告不要制度」
2022年までは、所得税で確定申告しても住民税では「申告不要」を選択できました。つまり外国税額控除を所得税で申請しながら、住民税では申告不要にして国保料への影響を抑えるという選択が可能でした。
しかし2023年(令和5年)分の確定申告からこの制度が廃止されました。所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなり、外国税額控除を申請すると住民税でも同じ扱いになります。
この改正の影響
外国税額控除を申請すると、所得税だけでなく住民税・国民健康保険料の両方に影響が及ぶようになりました。以前より「申請のコスト」が大きくなったため、外国税額控除を申請すべきかどうかのシミュレーションが以前にも増して重要になっています。
3. 外国税額控除の申請が国保料増加につながる理由
FIREして会社員収入がなくなり、金融資産だけで暮らす場合、特定口座(源泉徴収あり)やNISAを利用することで確定申告が不要になります。確定申告をしない場合、分配金・配当所得は国民健康保険料の計算に影響しません。
しかし外国税額控除を申請するには確定申告が必要です。確定申告をすると、本来「申告不要」にできた所得が申告所得として計算されます。その結果、翌年の国民健康保険料が増加するリスクが生まれます。
問題の構造を整理するとこうなります。
- 確定申告しない → 国保料・住民税への影響なし → 外国税額控除は受けられない
- 外国税額控除を申請する → 確定申告が必要 → 国保料・住民税が増加するリスクが発生する(2023年改正後はより顕著)
外国税額控除で取り戻せる金額と、確定申告によって増加する国保料・住民税を比較したとき、申告しない方がトータルで有利になるケースがあります。特に分配金・配当収入が多いFIRE達成者ほど、国保料への影響が大きくなりやすい傾向があります。
FIRE後の税金・社会保険料の全体像については「FIRE後に直面した税金と支出、2025年の記録」に実際の数字を公開しています。
4. FIRE後の確定申告が影響する3つのコスト
確定申告によって所得が申告されると、税金以外にも影響が出ます。FIRE後の生活設計で特に注意が必要な3つです。
国民健康保険料の増加
国保料は前年の申告所得をもとに計算されます。特定口座・NISAを使っていれば確定申告不要で国保料への影響はありませんが、確定申告をすると申告した所得が計算に含まれます。分配金・配当収入が多いほど国保料が増えます。国保には上限額があるものの、それまでは所得に比例して増加します。
住民税の増加(2023年改正で影響が拡大)
2023年以降、外国税額控除の申請によって住民税も同様に影響を受けるようになりました。住民税は翌年6月から徴収されるため、「申告したその年」ではなく「翌年」に影響が出ます。以前は所得税で申告しても住民税を申告不要にできましたが、現在はその選択肢がなくなっています。
扶養控除の影響
確定申告によって所得が増えると、扶養している家族の状況によっては扶養控除が適用外になる場合があります。家計全体への影響として見落としがちなポイントです。
健康保険の切り替えについては「退職後の健康保険はいつ切り替える?任意継続から国保に変えて大幅節約できた実体験」で詳しく解説しています。
5. 金融商品ごとの課税の仕組みと確定申告の要否
FIRE後に持ちやすい主な金融商品の課税ルールを整理します。
| 投資商品 | 課税方法 | 税率 | 確定申告の要否 |
|---|---|---|---|
| 国内株式(譲渡益・配当) | 申告分離課税 | 約20.315% | 特定口座(源泉徴収あり):不要 |
| 外国株式(譲渡益) | 申告分離課税 | 約20.315% | 特定口座(源泉徴収あり):不要 |
| 外国株式(配当) | 総合課税または分離課税 | 現地税+約20.315% | 外国税額控除を申請する場合:必要 |
| 投資信託・毎月分配型(分配金) | 申告分離課税 | 約20.315% | 特定口座(源泉徴収あり):不要 |
| NISA口座内の全商品 | 非課税 | 0% | 不要 |
重要なのは「毎月分配型ファンドの分配金」と「外国株の配当」の扱いの違いです。毎月分配型ファンドを特定口座(源泉徴収あり)で保有していれば確定申告不要で国保料への影響もありません。一方、外国株の配当で外国税額控除を申請するには確定申告が必要になります。
6. FIRE後の確定申告、私が実際にやっていること
特定口座(源泉徴収あり)を徹底して使う
分配金・配当はすべて特定口座(源泉徴収あり)から受け取るため、確定申告は基本的に不要です。自動的に源泉徴収されて完結するため、国保料への影響がありません。
外国税額控除は申請しない
外国株の保有をほぼなくし、外国税額控除の申請もしていません。2023年の税制改正以降、外国税額控除の申請は国保料・住民税の両方に影響するため、確定申告が不要な状態を維持する方を選んでいます。
事業所得・雑所得が発生した場合は申告する
ブログ収益・セミナー謝礼など、事業所得や雑所得が発生した場合は確定申告をします。この場合は経費を適切に計上することで課税所得を抑えることができます。
確定申告の費用対効果は「取り戻せる税金」だけで判断しない。国保・住民税・扶養控除への影響を含めた「家計全体への影響」で判断する。これがFIRE後の確定申告における基本的な考え方です。
7. 外国株からの移行後、ポートフォリオはどう変わったか
外国株の配当受け取りをやめた後、私のポートフォリオは大きく変わりました。
米国個別株の配当→毎月分配型ファンドの分配金へ
インベスコ世界厳選株式オープン・WCM世界成長株厳選ファンドを中心に、特定口座(源泉徴収あり)で受け取れる分配金に切り替えました。結果として、確定申告不要で毎月100万円(税抜き)のキャッシュフローが入ってくる設計になっています。
「外国税額控除を申請して少し得する」より「確定申告不要で安定したキャッシュフローを確保する」を選んだ。これが今のポートフォリオ設計の核心です。
FIRE後の収入設計については「分配金1,000万円を突破。FIRE後にたどり着いた「使いながら増やす」資産設計」に詳しく公開しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 外国税額控除は申請しない方が必ず得ですか?
必ずしもそうではありません。所得水準・保有銘柄・自治体によって変わります。「外国税額控除で取り戻せる金額」と「確定申告によって増加する国保料・住民税」を比較するシミュレーションが必要です。所得が低く国保料への影響が軽微なケースでは申告が有利なこともあります。
Q. 2023年の税制改正前は外国税額控除を申請しても国保料に影響しなかったのですか?
完全に影響がなかったわけではありませんが、住民税の申告不要制度を使うことで影響を軽減できました。所得税で確定申告しても住民税では申告不要を選べたため、国保料への影響を抑えやすかった。2023年以降はその選択肢がなくなり、所得税と住民税で同じ課税方式になります。
Q. 特定口座(源泉徴収あり)を使えば確定申告は完全に不要ですか?
国内の分配金・配当・譲渡益に関しては不要です。ただし複数口座の損益通算をしたい場合や外国税額控除を申請したい場合は確定申告が必要になります。また事業所得・雑所得がある場合も申告が必要です。
Q. FIRE後でも確定申告が有利なケースはありますか?
あります。医療費控除・住宅ローン控除・寄附金控除(ふるさと納税)などがある場合、申告によって還付が受けられます。また所得が低く国保料への影響が軽微なケースでは外国税額控除も有利になりえます。自分の状況をシミュレーションした上で判断することを勧めます。
Q. 毎月分配型ファンドの分配金は確定申告が必要ですか?
特定口座(源泉徴収あり)で保有している場合、基本的に確定申告は不要です。分配金は自動的に源泉徴収されて完結するため、国保料の計算にも影響しません。ただし他の所得との損益通算をしたい場合は申告することもできます。
まとめ:FIRE後の確定申告は「家計全体」で判断する
外国税額控除をはじめ、確定申告による税金の取り戻しは魅力的に見えます。でもFIRE後・国保加入者にとっては「確定申告が不要な状態を維持すること」がトータルで有利なケースがあります。
特に2023年の税制改正(住民税の申告不要制度廃止)以降は、外国税額控除の申請が国保料・住民税の両方に影響するようになりました。以前より判断が難しくなっており、シミュレーションなしで申告するのはリスクがあります。
私が選んだのは「確定申告不要で安定したキャッシュフローを確保する」設計です。特定口座・NISAを活用して確定申告を不要にし、国保料・住民税への影響をゼロに保つ。その上で毎月の分配金で生活費を賄う。これが今のポートフォリオ設計の根幹です。
確定申告の費用対効果は「いくら取り戻せるか」だけでなく「国保・住民税・扶養控除への影響を含めた家計全体」で判断することが、FIRE後の税務管理における最も重要な視点です。
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免責事項
本記事は筆者の実体験に基づく情報提供を目的としています。税務・社会保険の判断は状況によって異なります。詳細は税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。


