FIRE直前に襲う“ファイヤブルー”とは?不安の正体と後悔しないための3つの準備

地方FIRE生活

2024年8月、20年間の会社員人生にピリオドを打ち、ついにFIRE(経済的自立・早期リタイヤ)を達成しました。「これで自由だ」と胸を張ったその瞬間──株式市場はまさかの急落。自由な時間の使い方を考えるより先に、私は画面に映る評価損に目を奪われていました。「これでは経済的に自立したとは言えないのでは?」そんな不安が頭をよぎり、達成感よりも焦りが勝ったのです。

この心の揺らぎを、私はファイヤブルー(FIRE Blue)と呼んでいます。まるで結婚前の「マリッジブルー」のように、人生が大きく変わる直前に訪れる静かな動揺。FIREを目前に控えた誰もが、少なからずこの感情を通るのではないでしょうか。

本記事では、私が実際に体験した「FIRE前の不安=ファイヤブルー」の正体と、その乗り越え方を詳しく解説します。これからFIREを目指す方にとって、心の準備とお金の備え、その両面でのヒントになれば幸いです。

FIRE直前に現れる“ファイヤブルー”とは?【主な不安3選】

「FIREなんて、自由になれる最高のゴールじゃないか」──そう思っていた私も、いざその直前になると、想像以上に大きな不安が押し寄せました。長年の労働を終え、ようやく“時間と自由”を手に入れたはずなのに、心の中では次のような疑問と不安が渦巻いていたのです。

① 予期せぬ支出に対応できるのか

「本当にこの資産で生活できるのか…?」
FIRE後は毎月の給料という定期収入がなくなります。車検、家電の故障、家の修繕、家族の病気──想定外の支出が発生するたびに、「この資産であと何年持つのか?」という不安が顔を出します。特にFIRE初期は支出の変動幅を読み切れず、数字ばかりを気にして心が休まらない時期があります。

② 再び働かないといけないときに働けるのか

FIREを実現したとしても、「この先ずっと働かなくていい」とは限りません。想定外の支出や相場の急落が重なったら──再び社会に戻れるのか? ブランクのある自分を受け入れてくれる職場はあるのか? この不安は、自由のはずの時間を静かに蝕みます。「働ける自分でい続けること」も、FIREを長く続けるうえでのリスクヘッジだと痛感しました。

③ 相場の暴落リスク

「暴落時に取り崩しをしてしまうのでは…?」
FIREの土台は資産運用です。市場の急落は生活に直結します。私自身、FIRE直前に米国市場の調整で数百万円単位の評価損を経験しました。“売りたくないのに売らざるを得ない”──そんな状況に陥る可能性は誰にでもあります。だからこそ、「売らずに済む仕組み」を事前に整えることが、安定したFIREの鍵になります。

不安は「迷い」ではなく、「準備の合図」

FIREはこれまでの生活スタイルを180度変える決断です。しかし、いざその時を迎えると、「何を、どこまで準備すればいいのか」が分からなくなる瞬間が必ずあります。私も同じでした。支出の見直し、現金比率、健康保険、確定申告──頭では理解していても、実際にやってみると「これで本当に足りるのか?」と不安が尽きませんでした。

それでも、不安を“止まる理由”ではなく、“動く合図”と捉えることが大切です。手探りのままでも、一つひとつ不安を潰していく過程で、自分に必要な仕組みが見えてきます。不安を感じたということは、準備の意識が芽生えたというサイン。行動すれば見えるものがある──それがFIREを現実にする第一歩です。

FIRE前にやるべき3つの準備【私が後悔したポイント】

現金比率の見直し|全力投資から“キャッシュフロー設計”へ

FIRE後に痛感したのは、「資産額の大きさよりも、お金の流れの安定」が心の支えになるということでした。退職前まで全力投資に近いポートフォリオを組んでいましたが、相場の下落局面では「この中でどう生活費を出すか」と不安が募りました。
“株を売る”という行為を想像しただけで心がざわつき、自由を得たはずなのに相場に縛られてしまう──そんな矛盾を感じたのです。

そこで方針を転換。生活費2〜3年分の現金を確保し、それ以外は毎月のキャッシュフローを生む構成へ。定期的に利益を確定してくれる毎月分配型ファンド(例:インベスコ世界厳選株式オープン)を取り入れることで、暴落時にも資産を売らずに“自然に現金が入ってくる仕組み”を作りました。毎月の分配金が「心理的な利確」として機能し、相場を気にせず過ごせるようになったのです。

準備ステップ

  • 生活費2〜3年分の現金を確保する(売らずに済む“安全期間”を確保)
  • 毎月分配型ファンドで入金サイクルを整える
  • 「使う」「増やす」を分けた2層構造ポートフォリオにする(前者=生活安定、後者=長期リターン)

キャッシュフローの多様化|“分配金+労働収入”で暮らしを安定

FIRE後に完全無収入で過ごしてみると、想像以上に落ち着きません。資産が減っていなくても、入金がない=不安になる──これがFIRE初期に多くの人が直面する心理的ギャップです。

そこで私は、分配金や利回り収入に加え、少しの労働収入を組み合わせる複線型キャッシュフローに切り替えました。フルタイムに戻る必要はなく、得意分野や好きな仕事を続けるだけでも心の安定は違います。将来資金はNISA・iDeCoを使ったインデックス運用に切り分け、「今の生活を支えるお金」と「将来を育てるお金」を分離。さらに、分配金をWebローンなどの資金効率化戦略に活用すれば、保有資産を減らさず投資余力を保つことも可能です。

準備ステップ

  • 分配金+労働収入で生活費を賄う設計(安心感と社会的な接点を両立)
  • NISA・iDeCoは将来資金の育成枠として活用(役割分担で無理なく継続)
  • 分配金は再投資だけでなく資金効率化にも活用(Webローン等で投資機会を確保)

支出の再設計|“使う力”を取り戻し、FIREの意味を再確認

長年の節約習慣は、FIRE後の“自由”を制限することがあります。「お金を使う罪悪感」から抜け出せず、最低限の生活費で我慢するだけの暮らしになってしまうことも。予期せぬ支出は常に起こる一方で、教育費や住宅修繕費など“事前にわかる支出”は別口座で管理すれば、生活費と切り分けられ、突然の出費でも動じません。

そしてもう一つは、“楽しむ予算”をあらかじめ決めておくこと。旅行や趣味、家族との外食──これらは浪費ではなく「自由を実感する投資」です。お金を守るだけでなく、お金を活かす感覚を取り戻すことで、FIRE生活の満足度は格段に上がります。

準備ステップ

  • 教育費・住宅修繕費などは別口座で積み立て管理
  • “楽しむ予算”を年間枠で先に設定(自由を使う計画)
  • 固定費・変動費・幸福費に分類して家計を再設計

完璧を目指さず「70点」でスタートせよ

FIREの準備を完璧にしようとすると、いつまで経っても行動できません。FIREは試験ではなく、実践から学ぶプロセスです。7割の安心感があれば十分。残りの3割は、実際に始めてから整えていけばいい。

私も当初は「働かない」ことを理想にしていましたが、実際にやってみると、少し働くほうが精神的に安定することに気づきました。いまは週1〜2日の仕事で社会との接点を保ちながら生活しています。SNSや地域活動など、お金ではないつながりを持つこともFIRE生活の支えになります。FIREとは「働かないこと」ではなく、「働く・関わる・学ぶを選べる」状態を指します。

FIRE後のキャリア戦略|“自由に働く”を味方に

FIRE=完全リタイアではありません。むしろFIREの本質は、「働かなくてもいい状態で、働きたいときに働ける自由」です。

  • 趣味や特技を収益化(ブログ・YouTubeなど)
  • 週1バイトで社会保険や人とのつながりを維持
  • 得意分野でのフリーランス/プロジェクト単位の仕事

どの働き方にも共通しているのは、“選択権が自分にある”ということ。FIREは「労働からの解放」ではなく、「労働をコントロールする自由」なのです。

まとめ|“ファイヤブルー”を超えて、自分らしいFIREへ

FIREはゴールではなく、新しい人生のスタートライン。FIRE直前に感じる不安──“ファイヤブルー”は、誰にでも訪れる自然な現象です。しかし、正しい準備と柔軟な考え方があれば、その不安は行動のエネルギーに変わります。

  • 生活費2〜3年分の現金を確保し、心のゆとりを持つ
  • 分配金+労働収入でキャッシュフローを安定化
  • 教育費・修繕費の別管理で“使う力”を計画的に取り戻す
  • 70点で走り出し、行動しながら整える

FIRE後の人生は、「選択肢の数」で豊かさが決まります。不安を恐れず、自分のペースで、“選べる生き方”を楽しんでいきましょう。